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東京高等裁判所 昭和23年(ネ)434号 判決 1949年12月21日

控訴人

沖靜晨

被控訴人

本鄕村農地委員会

長野県知事

主文

控訴人の被控訴人両名に対する訴は何れもこれを却下する。

控訴人が被告を変更した後の訴訟費用は控訴人の負担とする。

控訴の趣旨

原判決を取消す、被控訴人本鄕村農地委員会が昭和二十二年三月五日附を以て、控訴人所有にかかる長野縣筑摩郡本鄕村字大三百七十九番の畑一反六畝十二歩および同所三百九十三番ノ二の畑三畝二歩につき爲した買收計画を取消す、被控訴人長野縣知事が昭和二十二年十月十六日附を以て、右土地につき爲した農地買收令書による買收命令を取消す、訴訟費用は被控訴人等の負担とする。

事実

当事者双方代理人の陳述した事実関係の要旨は、控訴代理人において、一、行政事件訴訟特例法(以下単に特例法と略す)第七條第一項によれば、行政庁の違法な処分の取消又は変更を求める訴においては、原告は、故意又は重大な過失なき限り、被告とすべき行政庁を誤つた場合に、訴訟提起後被告を変更することが許されているが請求の原因たる事実の変更については、特に規定するところがない、然し同法第一條には、この法律によるの外民事訴訟法の定めるところによる旨を規定するが故に、請求の基礎に変更なき限り、訴の原因たる事実の変更を為し得るものと解すべきである。

而して控訴人は、原審では自ら訴訟行為を為したもので、もとより法律上十分の知識なきため、故意又は重大な過失なくして、被告とすべき行政庁を誤つたのであるから、被告に長野県知事を附加し、なお原審で被告とした長野県農地委員会を同県東筑摩郡本鄕村農地委員会と変更し、且つ請求原因についても、次のように変更する、即ち(一)控訴人は、昭和二十年八月十五日以前たる昭和十七年一月に召集され、それまでは本件土地を自作していた農業者であつたが、自ら耕作することができなくなつたので、応召に際し一時これを小作人に耕作させたにすぎないのであるから、自作農創設特別措置法(以下単に措置法と略す)第五條第六号及び同法施行令第七條第二号によつて、本件農地は買收の目的となるべきものでないに拘らず、本鄕村農地委員会が昭和二十二年三月五日決定した農地買收計画の中に、これを含めて買收することにした処分は違法であるが故にその取消を求める。なお同委員会は同年十二月二十三日控訴人の為した右買收計画に対する異議について、まだ何の決定もしてない。(二)また右の農地買收計画については長野県農地委員会の承認があつた後、同年十月十六日附長野県知事が買收令書の交付に代え公告をしたが、県知事が買收令書を発するのは、形式的なものではなく、買收計画が適法か不適法かの実質内容を調査審議するのであり、前記のように本件農地は買收の目的とならぬものであるから、これを除外しないで為した右買收令書による買收行為は、措置法第九條によるも違法であるが故に、その取消を求める。(三)而して本鄕村農地委員会の買收計画樹立と、これに基く長野県知事の買收令書交付の処分とは、同一目的逹成過程上関連する一貫せるものであつて、両者は請求の基礎を同じくする。(四)なお被控訴人等は、長野県知事に対する訴については、專属管轄の規定により、長野地方裁判所に出訴しなければならぬというが上訴審で訴を変更し得ることは民事訴訟法でも認容するところで、それと同じ趣旨により特例法第七條の被告の変更、また上訴審で為しても差支えない。

二、本訴提起の期間については(一)昭和二十二年法律第二百四十一号自作農創設特別措置法中改正法律(以下法第二四一号と略す)附則第七條は、第一項で訴提起の期間、第二項でその起算日につき規定し第三項で、前二項の規定は昭和二十二年法律第七十五号日本国憲法の施行に伴う民事訴訟法の応急的措置に関する法律(以下民訴応急措置法と略す)第八條の適用を妨げないと定め、右法律第八條によれば、行政庁の違法な処分の取消又は変更を求める訴は、他の法律であつてしかも昭和二十二年三月一日前に制定されたものを除いた法律に、特別の定めのあるものに非ざる限り、当事者がその処分のあつたことを知つた日から、六ケ月以内に提起すべき旨を定めているのでそれに従えば、本件違法の農地買收処分(買收計画及び買收令書交付)が昭和二十一年十月公布の措置法に基いたものとして、その取消を求めんとするのが本訴の場合であるから、その後昭和二十二年十二月右措置法が法第二四一号で一部改正せられたけれども、この場合には、右の附則第七條は第三項のみが適用せられるので、即ち当事者がその買收処分のあつたことを知つた日から六ケ月以内に、訴の提起があればよいと解すべく、控訴人は昭和二十二年十月二十九日復員帰鄕して初めて右の買收処分を知り、その後六ケ月以内なる昭和二十三年三月四日に原審で訴を提起しているから、本訴は適法である。(二)また本件農地は措置法による買收の目的とはならぬものであるから(前述一の(一)参照、)これに対して為した買收処分「買收計画及び買收令書交付行為」は、全然無効であり、その救済を求める訴は出訴期間の制限はないのだが、本件は右のように一般の行政事件訴訟の出訴期間たる六ケ月内に提起したるを以て、この点より観察するも本訴は適法である。三、被控訴人等は措置法第七條所定の期間内に異議申立も訴願もなかつたと主張するけれども、措置法による県知事の買收令書交付の行政処分については、異議又は訴願を為し得べき規定がないから、特例法第二條により直ちに訴を提起し得るものである。また本鄕村農地委員会の買收計画は、既に県知事の買收令書の発布があつて、一応形式的に終了したから、異議の申立を為すことなく直ちに訴を提起し得べき正当の事由があるものである、尤も本件においては控訴人は買收の事実を知るや、直ちに口頭又は書面を以て、村農地委員会に異議を申出たけれども、その決定がないため(前述一の(一)末尾参照)県農地委員会に訴願を為した次第である(原審判決事実摘示参照)が、これらの手続の如何に拘らず、前述のように直接訴を提起し得るのであるから本訴は適法である。と述べ、

被控訴人両名訴訟代理人において、一、(一)控訴人は、昭和二十三年三月四日国を被告として買收決定取消請求の訴を提起し、同年九月二十八日被告を長野県農地委員会と変更し、控訴審において昭和二十四年三月十四日、長野県知事を被告に附加して同知事が昭和二十二年十月十六日為した農地買收令書交付の処分行為の取消を求め、更に長野県農地委員会に対する訴を取下げて、被告を本鄕村農地委員会に変更し、同委員会が昭和二十二年三月五日為した買收計画決定の取消を求める旨を附加した、かくの如く転々被告を変更することは、特例法第七條第一項但書にいわゆる故意又は重大なる過失あるものであり、それのみでなく、長野県知事を被告に附加して新に買收令書交付行為の取消を求むるのは、被告とすべき行政庁を誤つたときに該当せず、同法條によつて被告を変更することはできないし、また原審において長野県農地委員会に対する訴願裁決取消を求めたのとは、その請求の基礎を異にする新なる訴の提起となるべきもので、かかる請求の変更も許すべからざるものである。(二)しかも長野県知事の買收令書交付行為は本鄕村農地委員会の買收計画とは全然別箇の行政処分で、その取消を求める訴は、特例法第四條により「被告である行政庁の所在地の裁判所」たる長野地方裁判所の專属管轄なるが故に、東京高等裁判所に訴を提起することはできないし、また本鄕村農地委員会を被告とした訴訟係属中に、長野県知事に対し、被告を変更すとして、別個の訴を提起しても、前者の訴が後述の如く出訴期間経過の理由で当然却下さるべきものであるから後者もまた却下さるべきものである。(三)なお県知事の買收令書交付行為は、措置法第八條に定める場合に、同法第九條で為すべきものであつて、第八條に該当するかどうかを審査すれば足り、買收計画の実質の適否をも審査する義務なきこと明白であるから、この点の控訴人の主張もまた理由がない。二、次に昭和二十二年十月二十九日控訴人が本件買收計画及び買收令書の公告を始めて知つたとの事実は認めるが、法第二四一号附則第七條第三項の趣旨は同法施行の日たる昭和二十二年十二月二十六日前に当事者が処分のあつたことを知つた場合には、その処分のあつたことを知つた日から六ケ月を経過すれば、同條第一、二項所定の期間満了前でも、訴の提起を許さぬことを規定したものと解すべきで、控訴人がこれに反する主張を為すのは理由がない、而して控訴人が昭和二十二年十月二十九日本件買收計画及び買收令書公告のあつたことを知つた事実は、前示の如くその自認するところであり、右法律施行当時はそれからまだ六ケ月経過していないから、訴の提起はできるとしても、同條第一項により、右法律施行の日から一ケ月以内たる昭和二十三年一月二十六日までに、これを為さなければならぬのに、控訴人が原審に訴を提起したのは同年三月四日であるから(前述一の(一)参照)不適法である。三、被控訴人は措置法第七條所定の期間内に異議申立及び訴願をしなかつたから、特例法第二條からみても本訴は不適法である。即ち、控訴人が昭和二十二年十二月二十三日に本件買收計画に異議申立を為したことは否認するが、仮にこれありたりとするも、前示買收計画了知の時たる同年十月二十九日から十日の期間を遙かに経過しており、村農地委員会は、既に買收令書公告後でもあるので、正式な異議申立として受理することはできないと申伝えたところ、これを不服としてその後控訴人は、その主張の如く訴願を為したのである、然しこれまた期間経過後であり、何等宥恕すべき事由ありと認められぬので、却下されたのであるから、異議申立及び訴願共に不適法であつて、これなきに等しいわけである。四、控訴人の本案に関する主張の中、控訴人は措置法第五條第六号及び同法施行令第七條第二号に該当するとの事実は否認する、本件農地の買收は昭和二十二年三月五日にその計画が樹立せられたのであるから、その当時の法律たる、法第二四一号による改正の前の措置法を適用すべきものであるところ、控訴人は(1)自作農でなく(2)本件農地をかつて既に自作したこともなく(3)応召期間中一時貸をしただけではなく(4)村農地委員会から近く自作するものと認め且つその自作を相当と認められたのでもないことは、原審における控訴人の主張自体(原審判決事実摘示参照)及び甲第十一号証の記載からみるも明かであるから、改正前の措置法第五條第六号及び同法施行令第七條第二号に該当しない。と述べた外は、

原判決事実摘示と同一であるから、茲にこれを引用する。(立証省略)

理由

一、(一)控訴人が(1)昭和二十三年三月四日(特例法施行前)原審裁判所たる長野地方裁判所に、被告を國(代表者農林大臣)として、控訴人所有の本件農地に対し國の爲した買收決定の取消及び該土地の返還を求める訴を提起し、(2)同年九月二十八日(特例法施行後)附訴状に基き、同年十月五日の原審口頭弁論で、被告を長野縣農地委員会と変更して、同委員会が右土地に対し爲したる訴願裁決を取消し本鄕村農地委員会が昭和二十三年三月五日樹立した農地買收計画中より本件農地を除外するとの判決を求め、(3)当審の昭和二十四年三月十四日の口頭弁論において、昭和二十四年三月二日附書面に基き被告に長野縣知事を附加し、同知事が昭和二十二年十月十六日本件農地につき農地買收令書を発した処分行爲の取消を求め、(4)更に右同日の口頭弁論において同日附書面に基き、被告を同縣東筑摩郡本鄕村農地委員会と変更し、同委員会が昭和二十三年三月五日爲した本件農地の買收計画の取消を求めたことは、本件記録に徴し明かであり、控訴人が請求の原因として主張する骨子は、本判決の事実摘示に要約記載した通りであつて、これは控訴人が原審に訴を提起して以來、かわらざるところである。

(二)而して特例法第七條においては、原告が被告とすべき行政廳を誤つたときは、訴訟の係属中ならば被告を変更することができる旨を規定しているから、本件控訴によつて訴訟が現に係属中の当審において、誤つた被告の変更を爲すことは、勿論できることであるが、元來特例法の右法條は、同法第三條が取消又は変更を求めんとする処分を爲した行政廳を、当該事項について権限をもつ國又は公共團体の機関たる立場において、便宜形式的に訴訟当事者としたことに対し、出訴期間の定めのある行政事件訴訟で、原告が右形式上の被告とすべき行政廳を誤つたため訴を却下され、もはや正しい被告に対し訴を提起し得ぬような場合の、往々あるべきことを顧慮した救済的規定であるから、変更後の新たな被告に対しては新たな訴ではあるけれども、これは形式的のものにすぎず、その実質はどこまでも國又は公共團体を相手方とする訴であることに鑑み、いわゆる訴訟経済の方面からも考慮して、右の立法趣旨に副うように、同時に民事訴訟法の訴の変更に準じて考うべき面、即ち訴訟の目的物には勿論変更はなく、訴訟承継もない当事者の交替という面も存するのである。從つて本件のように控訴人が、被告たる行政廳を変更したのみならず、請求自体をも変更している場合にも、それが民事訴訟法第二百三十二條にいう請求の基礎に変更なき限り、同時に許さるべきものと解するのを相当とする。そこで控訴人の爲した前示被告の変更並にこれに伴う請求の変更を審査するに、(1)本鄕村農地委員会に対するものも、(2)長野縣知事に対するものも共に、原審で長野縣農地委員会を被告とし、本件農地がその主張するような理由から買收の対象となるべきでないのに、不在地主の小作地として買收されたことに対し、村農地委員会に異議申立をしたが、何等の決定も與えられないので、更に縣農地委員会に訴願したところ、昭和二十三年六月二日これを却下する裁決を爲したから、その裁決を取消して本鄕村農地委員会が樹立した農地買收計画より本件農地の除外を求めるという趣旨の訴と、その請求の基礎に変更あるものではないから、いずれも適法というべきである。

(三)尤も特例法第七條第一項但書は、原告に故意又は重大な過失があつたときは、被告の変更ができない趣旨を規定していて、被控訴両名代理人は、控訴人の爲した前示のような数次の被告変更は、故意又は重大な過失があつた場合にあたると主張するけれども、本件記録を調べてみると、原審では控訴人は、弁護士を代理人とすることなく、自身で訴訟行爲を遂行し、訴状準備書面の記載内容から見れば訴訟法規に通曉している者とは思はれないし、原審で訴訟進行中に前示長野縣農地委員会の訴願却下の裁決があつたので、第一次の被告の変更を爲し、原審で敗訴し、控訴してその第一回口頭弁論後始めて、弁護士を代理人に選任し、その代理人が受任後遅滯なく、前示のような当審における被告の変更を爲したのであるから、以上の事実丈では未だ以て控訴人に故意又は重大な過失があつたものとはいえないし、その他控訴人に故意又は重大な過失があつたと断定すべき事実を認めることができない、從つて控訴人の爲した被告の変更は前段(一)の如く適法である。

(四)なお被控訴人両名訴訟代理人は、本件長野縣知事に対する訴は、本鄕村農地委員会の買收計画とは全く別個の行政処分たる知事の買收令書交付行爲の取消を求めるもので、被告の変更も請求の変更も許すべからざるものであり、特例法第四條によつて、長野地方裁判所の專属管轄に属するが故に、当裁判所に訴の提起はできないと主張するが、原審が長野地方裁判所であつた訴の控訴審係属中でも前段(二)に述べたように右長野縣知事に対する訴が特例法第七條及び民事訴訟法第二百三十二條に定むる手続で爲し得るものと解することは、特例法第四條の專属管轄の規定と相容れぬものではないから被控訴人等の右主張は理由がない。

二、然らば、控訴人の(1)被控訴人本鄕村農地委員会及び(2)被控訴人長野縣知事に対する訴は、特例法第七條第二項により出訴期間の遵守については、最初に訴を提起した時にこれを提起したものとみなされたわけで、控訴人が原審に最初に訴を提起したのは前示昭和二十三年三月四日であるから、次にそれが法定の出訴期間を遵守したことになるかどうかを判断する。

(一)控訴人の当審における二つの訴の中右(1)は措置法第六條による処分の違法であること、(2)は同法第九條による処分の違法であることを、それぞれ主張して、各その取消を求めるもので、右二つの行政廳の処分は、ともに法第二四一号の施行前、即ち昭和二十二年十二月二十六日前に爲されたものであり、控訴人は同じく施行前たる同年十月二十九日に復員帰鄕して初めて右各処分のあつたことを知つたと自ら主張する(この事実は被控訴人等代理人も認めるところである)のであるが、元來法第二四一号により措置法中に加えられた同法第四十七條の二第一項によれば、かかる訴は、当事者がその処分のあつたことを知つた日から一ケ月以内に提起しなければならぬわけであるところ、同法條施行前には、かような短期の出訴期間の規定がなかつたので、施行前に爲された処分のあつたことを知つた者にも同條を適用することは、酷であるから、特に法第二四一号の附則第七條(以下單に附則第七條と略す)でかかる者については右一ケ月の期間は、処分了知の日から法施行の日までの期間を度外して、同法施行の日からとしたのである。ところが控訴人が最初に訴を提起した昭和二十三年三月四日は、既に右法第二四一号施行の日たる昭和二十二年十二月二十六日から一ケ月を遙かに経過している。(二)これにつき控訴人は、附則第七條第三項において、前二項の規定は民訴應急措置法第八條の規定の適用を妨げない旨定めてあり、本件農地買收処分は昭和二十一年十月公布の改正前の措置法に基いたものであつて、その後同法の一部が改正せられたけれども、かかる処分の取消を求める場合には、民訴應急措置法第八條を適用すべきであるから、同條に定むるように、控訴人がその処分を知つた昭和二十二年十月二十九日から六ケ月内に原審に訴を提起した本件の場合は適法であるというけれども、改正後の措置法中の一條文となつた第四十七條の二にいう「この法律による行政廳の処分」の中には改正法施行前に爲された処分をも勿論包含するから、前段(一)に説示の如く附則第七條が設けられたものである。尤も附則第七條第三項は辞句において妥当でない点もあるが、同條自体が措置法第四十七條の二第一項を受けている経過規定で、その趣旨は、右第四十七條の二第一項が民訴應急措置法第八條の規定にかかわらずとして、同法第八條を全面的に排斥しているために、既に同法第八條により六ケ月或は三年の出訴期間を過ぎて訴の提起が許されなくなつたものまでが附則第七條第一、二項で、法第二四一号施行の日から一ケ月或は二ケ月という出訴期間が復活するやの誤解を避けんとして、注意的に設けられたものと解すべきである。もし控訴人の主張するようだとすれば、措置法第一條に掲げられた目的の下に、終戰後始められた我が國の農地改革の大事業を、更に一層促進する等の必要から昭和二十二年十二月同法の一部が改正せられた中え、特に行政廳の違法処分の取消又は変更を求める行政事件訴訟の出訴期間を著しく短縮する新規定を設けた趣旨は、全く沒却せられて了うことになるであらう。從つて民訴應急措置法第八條は本件の場合にこれを適用すべきものではない。

(三)なお控訴人は、本件農地買收処分は全然無効であり、その救済を求める訴は出訴期間の制限はないのだが、それでも一般の行政事件訴訟の出訴期間たる六ケ月内に提起したという点からみても、本訴は出訴期間の遵守について適法であると主張するけれども、本訴が行政廳の処分行爲の無効確認を求めるのでなく、特例法第二條による訴であることは、控訴人の主張自体及び弁論の全趣旨から明かであり、その出訴期間は民訴應急措置法第八條によるべきではなくして、法第二四一号附則第七條によるべきものであることは、前段説述した通りであるから、右主張は理由がない。

そこで結局本訴は、当該処分のあつたことを知つた控訴人が、附則第七條第一項本文に定める法第二四一号施行の日から一ケ月以内に提起したのではないものとして、不適法なりというべく、從つて爾余の点につき進んで判断を須いるまでもなく、これを却下すべきものである。而して控訴人が前示のように適法に被告を変更したことにより、変更前の被告に対する訴は、特例法第七條第三項によつて取下げたものとみなされたのであるから、(当審昭和二十四年五月十八日の口頭弁論で控訴人が長野縣農地委員会に対する訴を取下げているのは、その後のことで、上記の法律効果を述べたにすぎないと認める)訴訟費用については、被告を変更した後に生じた部分につき、民事訴訟法第八十九條に則り、主文の如く判決する。

(玉井 斎藤 山口)

(目録省略)

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